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「縁の下の力持ち」〜土木の見えない工夫あるある〜

5月19日
読了時間: 4分

風薫る五月、いかがお過ごしでしょうか。


ゴールデンウィークも明け、新緑がまぶしい季節になりました。車で郊外を走れば青々とした田んぼが広がり、街路樹のハナミズキやツツジが目を楽しませてくれます。私たち設計者にとっては、冬の間に発注された業務が動き出し、次年度に向けた現地調査が本格化する、そんな時期でもあります。


今月は少し趣向を変えて、普段あまり語られることのない土木の「見えない工夫」について、いくつかご紹介してみたいと思います。


その① 道路のわずかな“傾き”


何気なく走っている道路ですが、実はまっすぐ平らに作られている区間はほとんどありません。路面には必ず横断勾配といって、中央から両端に向けて2%程度の傾きが付けられています。これは雨水を路肩の側溝へ流すための工夫で、これがないと路面に水がたまり、ハイドロプレーニング現象の原因にもなります。カーブでは外側を高くする「片勾配」が付けられ、車が遠心力で外に振られないよう、しっかり計算されています。


歩いていて気づかないこの数センチの差が、安全な走行を支えているわけです。


その② 歩道の縁石の“切り下げ”


横断歩道の手前で、縁石が低くなっている部分があります。あれは車椅子やベビーカーが段差なく通れるよう、わざとその位置だけ「切り下げ」ているのですが、視覚に障がいのある方が歩道との境界を白杖で認識できるよう、ほんの数センチだけ段差を残す設計が標準です。完全にフラットにしてしまうと、かえって危ないのです。


ユニバーサルデザインと一口に言っても、誰にとっての“ユニバーサル”なのかを考え抜いた、繊細な設計判断が隠れています。


その③ 河川護岸の“魚の通り道”


以前のブログでも触れましたが、河川の護岸や落差工には、できるだけ生き物が遡上できるよう、魚道や粗石を配した工夫が施されることがあります。コンクリートで固めるだけが治水ではありません。流れの中に変化をつくることで、魚や水生昆虫の生息場所を確保し、川本来の生態系を残す。「多自然川づくり」と呼ばれるこの考え方は、いまや河川設計の基本になっています。


人の暮らしを守りながら、川の中の小さな住人にも配慮する。土木の懐の深さを感じる工夫です。


その④ マンホール蓋の“模様”


道路にあるマンホールの蓋。あの模様は単なる装飾ではなく、滑り止めの機能を持っています。雨に濡れたマンホールの上をバイクで通過すると、つるりと滑って転倒する事故が後を絶たないため、各メーカーは凹凸のパターンを工夫し、排水性と摩擦力の両立を追求しています。最近ではご当地デザインのマンホールも増え、観光資源としても親しまれていますね。


機能とデザインの両立。小さな円盤一枚にも、技術者の試行錯誤が詰まっています。


その⑤ 造園の“植栽配置”


造園設計でも見えない工夫はたくさんあります。たとえば公園の樹木配置。日陰を作りたいベンチの南西側に高木を置き、夏の西日を遮る。風の通り道を考えて樹種を選び、落葉樹と常緑樹を組み合わせて、四季の変化と冬の日射の両方を確保する。建築物の前面には目隠しとなる中木を、視線の抜ける場所には低木でリズムをつくる。


植えた直後はスカスカに見えても、十年後を見据えた配置になっている。それが造園設計の面白さでもあります。


見えないからこそ、伝えたい


土木や造園の仕事は、完成してしまえば「あって当たり前」のものになります。道路は走れて当然、川は氾濫しなくて当然、公園は気持ちよくて当然。けれど、その「当たり前」の裏側には、数えきれないほどの判断と工夫が積み重ねられているのです。


私たちエーシーソーイングは、これからもそんな「縁の下の力持ち」としての仕事を、誇りを持って続けていきたいと思います。そして時々、こうしてその裏側を皆さまにお伝えできればと考えています。


新緑の季節、お近くの道路や公園を歩かれる際には、ぜひ足元の小さな工夫にも目を向けてみてください。きっと、いつもの景色が少しだけ違って見えるはずです。



 
 

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